鬼 に も 福 に も
ーもうひとつの京都ー
「田を耕し雨風をしのげる屋根があれば、人間生きていける」と、
美山の輝ける谷、田歌に暮らすワルターさんは言う。
大陸から渡来人が訪れ、稲作を広めた丹後半島。
日本海の豊かな漁場。蟹やらタイやらノドグロやら。
透明度が高く静寂の湾に並ぶ舟屋。
神様の通りみち宮津天橋立、
天然の良港で、軍港としても知られる舞鶴。
与謝野や綾部で織物が産業として栄える。
丹波でできた米や野菜と、美山や北山の材木が、
由良川、桂川、保津川の水運で運ばれ、都を造った。
そこで宇治のお茶と出会って、京都に固有の文化が生まれた。
日本人の生きてきた源流のような場所は、
現在も進化発展を続け、バイパスが引かれトンネルが掘られ
合理的で便利になっていく。大阪や奈良に近い南の地域では、
革新的にニュータウンと大型商業施設が整備され、人口が増える。
その反面、旧道は忘れられその周辺にあった生活が淘汰されていく。
古来よりこの地で田を耕し産業を起こし、
綿々と繋がってきた暮らしがある。
五穀豊穣、子孫繁栄、無病息災を八百万の神に祈る。
心の持ちようによって物事は鬼にも福にも見える。
さて、これから何を選んで生きようか。